FX相場研 究 確率論で挑む相場予測

vol.1 ゴールデンクロスとデットクロスのみを用いた売買の勝率と儲け

概要

移動平均線のゴールデンクロ ス、デットクロスは相場の転換点指標として用いられている。本研究では円/米ドル相場の日足チャートの5日移動平均線(短期線)、25日移動平均線(長期 線)を用い、最近20年間におけるゴールデンクロスの翌日の終値で買い、デットクロスの翌日の終値で売った場合の勝率と儲けを算出した。その結果、勝率は 0.4、取引1回あたり利益期待値は0.28円であった。このことから、ゴールデンクロス、デットクロスのみを売買指標に用いた単純な取引でも過去20年 において利益を上げ続けられたことが分かった。

背景

移動平均線は相場の方向性を把握するためのポピュ ラーな指標である。例えば「5日移動平均線」はその日を含めて過去5日間の終値の平均値を結んだものである。日足チャートでは5日移動平均線を短期線、 25日移動平均線を長期線とするのがポピュラーなようである。上昇トレンドでは短期線の下に長期線が位置している。逆に下降トレンドでは短期線の上に長期 線が位置している。そのため短期線と長期線がクロスする時点はトレンドの転換点である可能性が高い。短期線が長期線を下から上に突き抜ける場面をゴールデ ンクロスと呼び、下降トレンドから上昇トレンドへの転換点と考える。逆に短期線が長期線を上から下へ突き抜ける場合をデットクロスと呼び、上昇トレンドか ら下降トレンドへの転換点と考える。本研究では円/米ドル相場における日足チャートのゴールデンクロス、デッドクロスのみを用いて取引した場合の勝率、儲 けについて研究した。

方法

1989年1月から2009年7月までの約20年間の円/米ドル為替相場データを用い、次の条件で仮想取引した。
短期線を5日移動平均線、長期線を25日移動平均線とし、ゴールデンクロスとデットクロスを求めた。
Bet 取引(高値で売って、安値で買い戻す)の場合はデットクロスの翌日の終値で売り、ゴールデンクロスの翌日の終値で買い戻した。
Ask 取引(安値で買って、高値で売る)の場合はゴールデンクロスした翌日の終値で買い、デットクロスした翌日の終値で売った。
Bet、Ask 両方取引において、毎回 1 lot = 10000万通貨分を取引した。

結果

取引回数は Bet 132回、うち利益が出た回数は47回、勝率は0.36、利益合計は52.7、取引1回あたりの利益期待値は0.4円だった。(表1)
取引回数は Ask 132回、うち利益が出た回数は59回、勝率は0.45、利益合計は21.4、取引1回あたりの利益期待値は0.16円だった。(表1)
勝率こそ0.5を切っているものの、長期的に見ると Bet、Ask ともに利益が出ている。(表1、図2)
また今回のシミュレーションでは Bet の方が Ask に比べ倍以上の利益が出ていた。(表1、図2)
勝率は Bet よりも Ask の方が高いが、Bet の方が取引1回あたりの利益が大きかった。

表1 仮想取引結果まとめ

Bet Ask Bet & Ask
取引数 132 132 264
利益が出た回数 47 59 106
勝率 (利益が出た回数/取引数) 0.36 0.45 0.4
利益合計 52.7 21.4 74.1
利益期待値 (合計利益/取引回数) 0.4 0.16 0.28

円/米ドル 相場

図1 円/米ドル 相場 1989/01-2009/07

1989年1月から2009年7月までの円/米ドル相場を日足ロウソクチャートで示す。 赤線は5日移動平均線、緑線は25日移動平均線、▼はデットクロスの翌日の終値、●はゴールデンクロスの翌日の終値。▼の価格で bet 取引なら売り建て、ask 取引なら建て玉を手仕舞った。●の価格で bet 取引なら買い戻し、ask 取引なら買い建てた。


累積損益

図2 累積損益

1989年1月から2009年7月までの円/米ドル相場に対し、ゴールデンクロスで買 い、デットクロスで売ることを繰り返した仮想取引累積損益。取引量は全て 1 lot = 10000通貨単位で行ったものとした。赤線は bet 取引での累積損益、緑線は ask 取引での累積損益、青破線は bet とask 取引の合計累積損益。


考察

ゴールデンクロスとデットクロスのみを売買の指標とした単純な仮想取引であったが、約20年を通して利益を上げ続けられることが分かっ た。この方法は精神 状態の影響を全く受けない取引手法であり、経験や勘に頼る売買に比べてそのヒトの取引センスに左右されず、普遍的に利益を上げられるものであろう。今回は 全ての取引において 1 lot のみを売買したが、資産が増えれば取引量も増やすことができる。そのようにして取引量を増やしながら売買すれば今回の結果もよりも多くの利益が得られるだ ろうと予想される。またロスカットを併用して負け相場での損失を小さくするようにすれば、より早く資産を増やすことができると考える。


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